「あなたは、仕事で強いストレスを抱えていますか?」
この質問に何割の人が「Yes」と答えるでしょうか? 厚生労働省が五年おきに行っている「労働者健康状況調査」によれば、「仕事や職業生活で強い不安、悩み、ストレスを抱えている」と回答した労働者の割合は六〇・九%。働く人が長期継続的に強いストレスを感じている様子が伝わってきます。
仕事のストレスは、なぜ生まれて、どのように悪化して、どんなふうに私たちを苦しめるのでしょうか。アメリカ国立労働安全衛生研究所が提唱している「職業性ストレスモデル」という考え方があります。
肝臓の病気に例えると、お酒の飲み過ぎという原因(ストレス要因)で、肝硬変という病状(ストレス反応)になり、それでもお酒を飲み続けたので、肝がんという病気(疾病)になった、そんな進み方でしょうか。
途中で気づいて対処すれば、それ以上悪化することなく改善も可能ですから、早期発見・早期治療が大切です。
お酒を飲み過ぎても肝硬変にならない人がいるように、ストレス要因にさらされてもストレス反応が出ない人もいます。性格など「個人的要因」も大きく関係しますし、親の介護など「仕事以外の要因」、また上司や同僚による励ましのような「緩衝要因」などもストレス反応に関係があり、これらが総合的に作用するとされています。
ストレスが厄介なのは、「自分では気づきにくい」という点にあります。周りからみれば、身なりも不潔で、げっそりと元気がなく、普段は十の仕事が出来る人が一か二しかできていないような状況でも、本人は「少し疲れているだけ。なんともない」としか思っていないこともあります。
では、自分のストレスを早期発見するには、どうしたらよいのでしょうか。それには「体の変化」に目を向けることが大切です。「心の変化」や「行動の変化」は自分では気づきにくいのですが、「頻繁に下痢をする」「胃が痛い」「眠れない」などの「体の変化」は自分でも気づきやすいものです。
周りの人から様子がおかしいと指摘を受けたら、拒絶せずに、まずは自分の「体の変化」に目を向けてみましょう。体の変化が自覚できたら、次は「行動の変化」、その次は「心の変化」に目を向けてみましょう。
そして、メンタル不調発症のきっかけとして、次のものが該当しないか、振り返ってみましょう。
・自信を失う体験
・社会的に糾弾される立場に追い込まれる状況
・孤立無援の状況
このようにして自らのストレス要因やストレス反応などに気がついたら、旧労働省(現:厚生労働省)が開発した「職業性ストレス簡易調査票」で自分の健康リスクをチェックしてみましょう。十分程度で回答可能な簡易診断です。調査票は「職業性ストレス簡易調査票」で検索するとインターネット上からダウンロードできます。